我々は変化の最先端で勝負することを誓います

”裸足の美学からの脱却”

ダントツの舞台裏
プロモーション代表 菅原泰男コラム

7) お客さん、そのスイングじゃ、人生も空回りしますよ。

ところでどうなりたいんですか? シングル目指しますか?

今回は、人生を空回りさせないSARサイクル(前回)の正しい回し方について説明します。ここでは、1日1日の差が一生の差に、1人1人の差が一企業の差になることを理解ください。SARサイクルを毎日個々人が正しく回していれば自己成長とともに企業競争力も強くなるのです。

私個人の話で恐縮ですが、1年間私自身が空回りし続けた恥ずかしい話をさせてください。

自分が正しく変わらなければ空回りするだけ

私は、会社を創業して今年で10年目(2008年当時)になります。創業してから数年間は、好きだったゴルフに行く余裕や行こうという勇気がなく、結果的に長い間、プレーを封印することになりました。やっと3年前から少しずつ再開しましたが、久しぶりに回ってみると、体力の衰えを痛感せざるを得ませんでした。このままではダメだと、昨年1年間は、健康とリフレッシュのため、週1回のペースでゴルフに行くことを決心しました。

実際、週1回に近いペースでゴルフ場に通い、おかげで基礎体力面は少し強化されましたが、スコアは全く変化なし。再開前、「これだけ集中してやれば当然、ゴルフの腕もかなり上がるだろう」と内心思っていただけに、ショックでした。

この間、ドライバーとパターを2回、アイアンを1回買い替えたほか、ゴルフ上達のためのDVDや本、小道具も買ったりしました。また、スポーツクラブのゴルフレンジでかなりクラブを振りましたが、一瞬良くなったかなと思ってもまたすぐ元通りです。

要するに、アクションだけでは伸びないことをこのとき初めて悟り、またいくら道具を変えようが自己レビューしようが、本人が正しく変わらなければ空回りばかりで意味がないことを実感しました。「もしかして俺ってゴルフのセンスがないのかなぁ…」と、この頃にはすっかり自信を喪失していました。ゴルフ場にはストレスを発散しに行っているはずなのに、変なストレスを溜める一方でした。

とはいえ、もともと負けん気が強い私はここまでやっているのに、スコアが思うように伸びないことに納得がいきません。基礎体力も上がってきたことだし、今後もゴルフはずっとやりたい。今年も同じことを繰り返すのはバカだと思い、メンバーになっているクラブの先生に、思い切ってパーソナルトレーニングを受けたいと申し出ました。

菅原
「ゴルフを教えてほしいのですが…」

先生
「菅原さん、今スコアはどれくらいですか?」

菅原
「だいたい100点満点ぐらいです」

先生
「どのくらいのペースでコースに出ていますか?」

菅原
(いいところついてくるな。100叩きで週1回とは言えない…)
「け、けっこう、行ってます」

先生
「ふーん。ところでどうなりたいんですか?シングル目指しますか?」

菅原
(えっ?1年間スコアが伸びなくてヘタっている俺がシングルなんて目指せるわけないのに…)
「う、うまくなればいいんですけど…」

先生に「どうなりたいの?」と聞かれて、ハッと気がつきました。人にはいつも「ゴールイメージをしっかり持ちなさい」「目標と納期は、明確にしなさい」などと言ってきたのに、そんなことは何も考えずに先生にすがっている自分が恥ずかしくなりました。

しかしながら、明確なゴールが描けていなかったとはいえ、私にとっては藁をもつかむ新たな挑戦でした。こうしてとにかくレッスンをスタートさせました。

先生の指導が始まったものの、約20年間自己流でプレーしていたため、かなり悪い癖がついていました。立ち位置や、立ち方から始まり、クラブの握り方、バックスイングなど、ほぼすべてにおいて修正が必要でした。

少しずつ直していきましたが、あまりにもいろいろな個所をいじったためか、コースに出た時には良い時と悪い時の差が激しく、日によって20もスコアが違ったり、前半と後半で10も違ったりと、毎回押し寄せる大きな波に一喜一憂する日々でした。

自信を取り戻すと、身の回りが客観視できるようになった

しかし、半年以上たった今では少しずつ安定し、飛距離で10%以上アップ、スコアは100前後から90近くまでになり、「俺もやればできるんだ」と少しだけ自信を取り戻しました。ゴルフの先生からは身体能力が高いと言われ、よくよく思い起こしてみれば、私は学生時代、体育はずっと5。しかし、スコアが思うように伸びないことで、小さい頃スポーツ万能だったはずの私も、「自分はゴルフのセンスがないのだ」というところまでテンションが下がっていたのです。

スコアが低空飛行を続けている時は、シングルプレーヤーなどかけ離れた世界のように感じていましたが、成果が出始め、レベルが上がってくると、「もしかして俺でもシングルが狙えるかも。もう少し本気でやってみよう」と思うようになりました。

この原稿を書きながら目標を決めました。「来年の夏までに、シングルプレーヤーを目指します」。半年前には、考えもしなかったことですが、人間はこのようにギアチェンジできるものなのだということも、ここで学びました。

(実は今週、実家の宮崎のゴルフコースで、42+37=79 <ノータッチ、OKなし>が出ました。ウソみたいな本当の話です。半年前まで100叩きの私が、信じられません)

こうなると不思議なことに自分の周りも客観的に見えるようになりました。ゴルフが本当に上手な人と下手な人は、一体、何が違うんだろうと思い、SARサイクルで自分なりに比較してみました。

SARサイクル ゴルフ編

― 超一流トッププロスタイル ―

■前:シナリオ

  • 睡眠をしっかり取り、朝食もきちんと食べて、スタート時間より早目に到着、その日のプレーのテーマや目標などを確認
  • ストレッチをしっかり行い、練習場でコーチやキャディーとともにスイングチェック
  • 練習グリーンでパターの感覚を最終チェック

■中:アクション

  • シナリオに沿って、自分を信じてプレー
  • その日の天候や風、芝などコースを読み取って、自分の感覚でプレーする
  • キャディーとも相談し、その都度スイングや状況をチェック

■後:レビュー

  • プレー後、その足で練習場に向かい、その日気になったことや思い通りにいかなかったこと、思いついたことを納得いくまでチェック
  • コーチやキャディーにスイングなどを見てもらいアドバイスをもらう
  • しっかりストレッチし、お風呂でクールダウン

― 下手くそ素人スタイル ―

■前:シナリオ

  • 前日、飲みすぎや睡眠不足でぎりぎりに到着
  • スタートまで時間があっても、ぼーっとしている
  • ストレッチや練習もしないで、いきなりティグランドへ

■中:アクション

  • 何の目的もなく目の前の球を打つ
  • OBや池ポチャ、トップやチョロを連発、走って走って息を切らし、また失敗の悪循環
  • 自信のなさ、緊張やイライラ、体調不良、今日もいつもの3桁スコア

■後:レビュー

  • 終わるとすぐに風呂に直行
  • 風呂上がりのビールはうまいと上機嫌
  • このゴルフ場は相性が会わない、フェアウェイが狭い、グリーンが難しいなど言い訳のオンパレード
  • ゴルフは楽しければそれでいいと脳天気

終わった後のレビューと、信頼できるコーチの存在が大事

超一流トッププロと下手くそ素人の決定的違いは、2つあります。

1つは、レビューをするかしないかです。トッププロと呼ばれる人たちはプレー終了後、必ず練習場へ行きます。ラウンド後の練習がいちばん効果的であることを知っているからです。その日、どこが悪かったのかをチェックし、すぐに修正をかける。そうすることで次の日まで悪い部分を引きずらないようにし、そして、再び自信を取り戻して、次のシナリオやテーマを持って翌朝を迎える。プロはそうした習慣ができているのです。

それに比べ、下手くそ素人タイプは、終わった後、練習場に行く人はいません。もちろん、私自身も終わるとすぐにお風呂へ直行タイプです。

もう1つの違いは、コーチやキャディーの存在です。トッププロになれば必ず名コーチや名キャディーがついています。このレベルまで達した人たちは皆、自己流の限界や自分だけの世界の限界を分かっているのです。そして、ゴルフのSARサイクルが空回りしないよう、プレー中や練習中、常に彼らから客観的なアドバイスをもらうのです。このパートナーがいるかいないか、そういった人たちを信頼できるかできないかは、自己成長に大きく影響してきます。

当然ですが、両者の差は、時間とともに広がるばかりです。トッププロであればあるほど、基本のSARサイクルを大切にし、日々実践していることがお分かりいただけると思います。

ゴルフのSARサイクルを空回りさせていた私は、なぜもっと早くからコーチをつけなかったのか思い返してみました。突き詰めて考えてみると、お金がかかるからやらなかったのだと思います。もしお金がたくさんあれば、もっと早くお願いしただろうし、ここまで自己流を通さなかったでしょう。

ビジネスでは、お金がなくても素晴らしいコーチに学べる

では、お金がなければ、パーソナルトレーニングは受けられないのでしょうか?

タイガー・ウッズなど世界のトッププロは、確かに小さい頃からお金のかからない熱心な父という素晴らしいコーチがついている場合が多いのです。しかも強い絆と深い愛情の熱血指導で、ゴルフの基礎を叩き込まれます。恐らく指導料としてお金に換算したなら、相当な額になるでしょう。こうして持って生まれた類まれなる才能とその環境がスタープレーヤーを生み出しているのです。自分で稼ぐようになると、今度は、世界中から自分に合った名コーチや名キャディーを探し、そこにお金を投資して信頼できるパートナーを見つけています。

それでは、ビジネスの世界はどうでしょうか?

入社した会社にお父さんがいて熱血指導してくれるケースは、あまり多くないと思います。しかしその時は、社内で自分の名コーチとなってくれる父親代わりを見つければいいのです。つまり、会社の中のトップやできる上司、先輩にかわいがられ、指導してもらうわけです。こうすればお金を一切使わずにして、自分で自分にふさわしい人を選べます。また、お客様の中で素晴らしい方を見つけられれば、お金をいただきながら、いろいろ学ばせてもらうことだって可能です。

考えてみれば、会社ほど環境が整っているところはありません。お金をたくさん持っていなくても、給料をもらいながらでも、自分次第で素晴らしい人にコーチしてもらえる可能性が高いのです。

ただし、会社のぬるま湯に浸かったままで、このことに気づかないでいると、空回りのビジネス人生になってしまいます。今の環境をすぐに見直し、誰に指導してもらえばいいのか、どうレビューすればいいのかをまずは考えることが大事です。これこそがビジネス界のシングルプレーヤーへの一番の近道だと思います。

このことは個人だけでなく、企業も早く気づく必要があります。企業は社員のために、教育したり研修したり、コーチングの勉強をさせたりしますが、それ以前に、このSARサイクルの大切さを理解させないと全く意味がありません。お金をかけた研修も、まさに猫に小判状態で、大きな無駄遣いになりかねません。

トップアスリートと呼ばれる人には必ず名コーチや名キャディーがついています。信頼でき、客観的にアドバイスをくれる第三者を自分のパートナーにしています。こうした人が周りにいないと、トップの人でさえ空回りしてしまうことを自己認識しているのです。SARサイクルをきちんと回し、レビューをしっかりしていても、いまだに伸びが悪いという人は、次のステージに行くために、自分に合った優秀なコーチにつくことが重要になります。

SARサイクルは回り続け、2つのステップに収斂される

ビジネス人生は、長丁場です。シナリオ(前)→アクション(中)→レビュー(後)のサイクルは常に回り続けます。前回は前・中・後を縦に見てきましたが、実は下の図のように横に連続しているのです。

シナリオ(前)→アクション(中)→レビュー(後)が連続していくうちに、レビュー(後)してからシナリオ(前)を作るというステップは、1つのビジネスリズムとしてまとまっていきます。

すると、レビュー(後)とシナリオ(前)の一括りの部分は、自己成長のための「インプット」、アクション(中)の部分は自己実現するための「アウトプット(アクション)」と言い換えることができます。

つまりSARサイクルの3ステップは、ビジネスサイクルを繰り返していくうちに、このインプット(レビュー+シナリオ)とアウトプット(アクション)の大きな2つのステップに収斂されていくのです。そこで、X軸にアウトプット(アクション)、Y軸にインプット(レビューとシナリオ)と定義すると、第1回でご紹介した人財マトリックスに合致します。

そして合致したマトリックスは、第1回で紹介したモスキートマトリックス、第2回、第3回超一流VS一流、、第5回の善玉菌VS悪玉菌に見事にクロスオーバーするのです。

■I型≒超一流≒善玉菌

SARサイクルをしっかり回すビジネスリーダータイプ。

自分自身の限界を知り、プロのコーチやトレーナーをつけ、上質なインプット(レビューからシナリオへの転換)から、大きなアウトプット(アクション)を導く正のスパイラルを持つタイプです。

→トップギアでアクセルを踏み込み、エンジン全開、絶好調です。

■II型≒一流

アクション中心でレビューとシナリオが苦手なまさに裸足の美学タイプ。

短期決戦ではなんとか通用するが、インプット(レビュー+シナリオ)の弱さを変革しない限り、中長期の戦いで、I型に大きく差をつけられます。

→ローやセカンドでアクセルを踏み込み、エンジン限界、壊れそうです。

■III型

インプットだけで、アウトプットを意識しない評論家タイプ。

まさに時間やお金の無駄使い。このままではI型になるのはいつまでたっても夢物語です。早く目を覚まし、現実を認識しましょう。

→ニュートラルでアクセルを踏み込み、空ぶかし。前進しないで、ガソリンやオイルを消費するだけです。

■IV型≒悪玉菌

アウトプットもインプットも意識しない足手まといタイプ。

悪玉菌スタイルは、時間の経過とともに負のスパイラルに入り、大きなリスクや危険性を生み出します。一刻も早く自己認識し、とにかく1歩前進を目指すことです。

→ギアをバックに入れ、アクセルを踏み込み、逆走します。このままでは事故につながりかねません。

日々の習慣が人生やビジネスに大きな差を生む

日々の習慣が、人生やビジネスの大きな差を生み出すことをご理解いただけたと思います。最後にどのように差が付いていくのか以下に示しますので、しっかり認識してください。

― 人生の差 ―

  • 1日1日の差が1週間の差
  • 1週間1週間の差が1カ月の差
  • 1カ月1カ月の差が1年の差
  • 1年1年の差が一生の差

を生んでしまう。

― 企業の差 ―

  • 1人ひとりの差が1チームの差
  • 1チーム1チームの差が1部門の差
  • 1部門1部門の差が1事業部の差
  • 1事業部1事業部の差が一企業の差

を生んでしまう。

人生はまず1日1日、企業は1人ひとりを大切にしていただきたく思います。最終回では、私が考える自然の摂理に基づくビジネスリズム「宇宙の法則」について説明したいと思います。